複合的にビルを再生することで活気あるストリートを実現
受託資産運用本部では、ビル単体の再生のみならず、街全体を見渡し、通りを行き交う人々の流れやニーズを汲み取りながら、複合的に商業施設を開発することで、調和の取れた街づくりを目指しています。
今回ご紹介する「数奇屋通りプロジェクト」は、日々営業をさせていただいている銀座エリアにおいて、裏通りに位置する3ヶ所のビルを複合的に再生することで、集客力が低かった地域に人を呼び戻し、活気あるストリートの再生を目的とするものです。
STEP 1
『銀座サザンビルの再生が、数寄屋通りプロジェクト始動のきっかけに
銀座サザンビルは、銀座8丁目の裏通りにある6階建てオフィスビルだったのですが、集客を高めて通りを活性化するために、飲食店中心のビルへと再生したのです。
とくに我々がこだわったのは、ご入居いただくテナント様でした。
「裏通りでも、お客様が足を運びたくなるような“こだわりの店”を集める」というコンセプトを打ち出し、募集から2ヶ月を待たずして、すべてのテナント様が決定したのです。
新店舗がオープンすると、明らかに人通りが増え、周囲の店舗も活気づいてきました。裏通りに、明るさが増してきたのです。
「たった1棟のビルが再生するだけで、こんなにも周辺への波及効果が見込めるんだ…。」我々は、裏通りが持つポテンシャルを、改めて実感していたのです。
その後しばらくして、「うちのビルも、サザンビルのように再生してほしい」というご相談を受けました。
STEP 2
調和をはかりながら再生事業を進めることで、相乗効果を狙う
ご依頼のひとつは、銀座コリドー通りの路地裏に位置する、数奇屋通りに「Aビル(仮称)」を所有するオーナー様からでした。
「うちは、昔ながらのスナックやクラブが入居している雑居ビルだ。このままでは、これからの時代、どんどん集客が落ちていくだろう。なんとか銀座サザンビルのように、再生できないだろうか…」
Aビルのオーナー様は、そうおっしゃって、我々に再生プランから建築まで、一任してくださったのです。
ちょうど、Aビルと時を同じくして、ある仲介業者から「Bビル(仮称)」を紹介されました。
よくよく話を聞いてみると、なんと驚くべきことに、Bビルは、我々がまさに再生しようとしているAビルのとなりに建っている、老朽化したビルだったのです。 「AビルとBビルを同時に再生することで、より相乗効果を見込めるはずだ」 我々はすぐにBビルを購入し、A・Bともに再生させることを決意しました。
「銀座サザンビルを再生させたそうだね。うちのビルにも、力を貸してくれないだろうか」
我々は、ちょうど近隣のA・Bビルの再生に着手していることをお伝えし、3つのビルで調整をはかりながら新築計画を進めることで、エリア一帯の活性化を目指すことにしました。
こうして、ストリート再生事業「数奇屋通りプロジェクト」が始動したのです。
STEP 3
コンセプトも事業形態も異なる3つのビルが、それぞれに共鳴し合う
ビルの再生ポイントは、「用途変更や改修工事を加えることで、いかに収益性の高いビルに生まれ変わらせることができるか」ということです。
我々は、銀座サザンビルでの経験を踏まえ、Aビルのオーナー様に、こう提案しました。
「個性ある飲食店に入居してもらうことで、他との差別化をはかりましょう。そのためには、ある程度資金をかけて、改修する必要がありますが、必ずご期待以上の賃料設定を実現させますから、ご安心ください。」
「プランニングから改修工事、リーシング、賃料決めまで、我々が責任を持って、一貫してやらせていただきます」
こうしてAビルは、オーナー様との共同事業という形で、再生事業を進めることになりました。
Bビルは、当社がいったんビルを買い取り、再生してから売却するという、従来のリプランニング事業となりました。
“ストリート再生”を目指すからには、3つのビルが共鳴しあうコンセプトづくりが不可欠。
「この辺りには、接待で訪れるビジネスマンも多い。テナントの質にはこだわりつつも、さらにグレードの高い、落ち着きのある飲食ビルにしよう」
我々は話し合いの結果、Aビル、Cビルと客層がバッティングしないよう、年齢層や価格帯を少し高めに設定した飲食ビルを新築することにしたのです。
「新築プランとリーシングのみをお願いしたい」
Cビルに関しては、オーナー様より上記のようなご依頼があったため、我々は、新築コンセプトと、テナント誘致のみをお手伝いさせていただくことになりました。
Cビルは建物面積が小さいため、3階建てにして、1棟でひとつのテナント様を誘致するというコンセプトを打ち出しました。
STEP 4
ビルの問題点を是正し、個性あふれるショップの誘致に成功
最初に改修工事に取り掛かったのはAビルでした。
同ビルに、飲食店を誘致するためには、用途変更の申請手続きを行わなくてはなりません。また、すでに現在の建築基準法や消防法に合致しなくなっている点も多く、これを是正して、区役所に建築確認を取る必要があったのです。
「オーナー様やテナント様、そして地域の方々に喜んでいただけるビルをつくりたい」
我々は、いつもそんな気持ちで工事に取り組んでいますが、良いものを追求すれば、それだけ費用がかさみます。
いくらオーナー様との信頼関係が構築されていても、密なコミュニケーションを怠れば、
「本当は、もっと低価格でできるのではないか…」
という疑心暗鬼を招き、亀裂が生じてしまう可能性もあります。
そのため、些細なことでもオーナー様と相談しながら進めることを、第一として取り組みました。
テナント誘致に関しては、
「コリドーのような表通りではありませんが、この近隣には、大企業の本社ビルもありますし、高品質で人気の高い飲食店も点在していますから、まちがいなくポテンシャルの高い通りなのです。A・B・Cビルと複合的に再生することで、この地域一帯の活性化をお約束します!」
我々が、熱意を持って“ストリート再生事業”計画を説明すると、ほとんどのテナント様が出店を快諾してくれました。その結果、東京初出店となる郷土料理のお店などが入居し、個性あふれるラインナップとなったのです。もちろん、オーナー様との約束どおり、コリドー通りにも負けない水準の賃料を実現させました。
STEP 5
点から線へ、そして面への街づくりを目指す
どの通りも賑わっているイメージの強い"銀座"ですが、表通りから一本裏路に入るだけで、暗くて人通りの少ないエリアが多いのが現状です。
今回のプロジェクトにより表通りとはひと味ちがった個性がキラリと光る通りが出現するはずです。
これこそ、銀座路地裏文化の幕開けではないでしょうか。
ビルが変われば通りが賑わい、そして街全体の流れが変わってくる。今まで手がけていたビル単体での再生が“点”だとするならば、ストリート再生は“線”で、街づくりは“面”だと、我々は考えます。
我々はこれからも、初心を忘れずに、活気のある街づくりを目指していきます。
当社が、同業他社様と大きく異なるのは、自分自身の営業成績や、部署単位での利益を追求するのではなく、当社で働く仲間一人ひとりのために、部署を超えて協力し合える体勢が確立されているという点です。
そのため今回のプロジェクトにおいても、一人なら到底収集しきれない銀座のあらゆる情報が、さまざまなメンバーによってもちよられることで、より確かで、より充実したリサーチのもと、皆さんにご満足いただけるストリート再生事業へと発展していったのです。
我々、受託資産運用本部では、目先の利益にこだわるのではなく、地域のオーナー様やテナント様、そして同業他社様とも十分に話し合いを持ちながら、“共利・共生”を目指して都市の再生にチャレンジします。
つねに中立に立って何が正しいのかを冷静に判断することで、関わるすべての方が幸せになり、共に潤い、共に生きられる街づくりを目指していきたいと考えています。