次世代のビジネスを担う企業をサポートするために・・・
『step to the TOP』をコンセプトに“Hi SPEED-SECURITY-SPEC”を搭載した次世代型オフィスビルを新築
当社では、老朽化等の理由によって市場のニーズに合致しなくなり、人に使われなくなってしまった建物、即ち価値を失ってしまった建物を、再び「人に使っていただける」かたちにすること、コンバージョンの企画・実行、そしてテナント誘致を行うことによって、その土地建物が持つポテンシャルを十二分に引き出し、不動産を再生する事業を行っています。
今回ご紹介させていただくプロジェクトは、当社が初めて手がけた新築プロジェクトです。ビルのコンセプト、クオリティーに対して、納得がいくまで徹底的に議論を交わし、ディテールまで拘りつくすことで、地域の活性化へと繋がりました。
STEP 1
『電気街秋葉原』を日本有数のビジネスの拠点に変えたい。
秋葉原の持つポテンシャルを十二分に引き出したい。
そのためには、新フロントビジネスエリア『秋葉原』の将来を担うベンチャー企業をサポートできるようなビルを作ればいい
私が神田佐久間町のIビルに出会ったのは、2005年11月のことでした。
「これは・・・改修は無理だ」私はビルをひと目見てそう感じました。昭和30年代に建てられたこのビルは、既に手の施し様がないほど老朽化が進んでいたのです。「改修は不可能だ・・・」私は肩を落として帰路につきました。その帰り道の途中、私はあることに気がつきました。人が、それも沢山のビジネスマンが駅に向かう私と逆方向に歩いてくるのです。
何故このビルの前面道路にビジネスマンが多く往来しているのか。その答えは、秋葉原と浅草橋(空港とダイレクトアクセスの都営浅草線の停車駅)とを結ぶ最短ルート上にあり、ビジネスの拠点としては非常に好都合な場所だったのです。
「この場所に、今の秋葉原には少ない明るく清潔感のある斬新なデザイン、企業活動を万全にサポートできるハイスペック、夜遅くまで働いていても大丈夫なセキュリティー体制、そして貴重な時間を生み出すための『スピード』に拘ったビルを作ったら・・・どうなる??」
そう思うと、この場所にビルを新築することに熱く胸を躍らせ、早く計画を立てたい一心で全速力で会社へ向かいました。
STEP 2
リプランニング事業で蓄積したノウハウを新規事業に活かす。そうすることで、もっと大きな社会貢献が出来る
息を切らして会社に戻ると、大学時代の拙い経験を頼りに設計図を描き、事業計画書を作成し始めました。
「本当に大丈夫か?」
社内のあちこちから、そんな声が聞こえてきました。
それもそのはず、入社半年にも満たない新卒の私が、当社初となる新築ビルプロジェクトを手掛けようとしているのですから、無理もありません。
その夜、私は自ら描いた設計図と、先輩に何度も教わりながら綿密に練り上げた事業計画書を手に、社長へプレゼンテーションをしに行きました。「今までリプランニング事業部で培ったノウハウを、この新築プロジェクトで発展させたいのです!当社が持っているノウハウを新築事業で活かすことができれば、もっと大きな社会貢献ができるはずです!」私は必死になって、社長に思いのたけをぶつけました。
「・・・どうしてもやりたいのか?」
「・・・はい、やりたいです!やらせてください!!」
その1ヵ月後、無事購入の売買契約は終了し、翌年1月に引渡しを完了しました。
STEP 3
“step to the TOP”というコンセプトに乗せ、細部まで思いを込める
“やると言い出した者がリーダー”が当社の社風であり、新卒の私に数億円のプロジェクトが任されました。普通の会社なら、新卒の私に数億円の、しかも会社の新規事業を一任することなど有り得ないのでしょう。当社には「正しいことを貫く、美しい仕事をする」という信念・哲学が根付いており、正しいこと・美しい仕事を追及する過程においては先輩後輩などの上下関係は関係なく、自分が思うことを素直に、且つ真剣に議論をすることができるフィールドが整っています。
「世界のビジネス街『秋葉原』の将来を担う、そんなベンチャー企業に使っていただけるようなビルを創りたい」
私は本プロジェクトの購入時より抱いていた夢と、このプロジェクトに対する自分自身の熱い思いをメンバーに伝え、常識を超えたクオリティーのビルを創造することに方針を定め、プロジェクトを進めました。
プロジェクトのキックオフミーティングの時、私が語った『夢』に同じ思いを重ねてくれたメンバーから、刺激的で斬新なアイデアが次々と面白いほど生まれてきました。白熱の議論に議論を重ねた結果、生まれたプロジェクト・コンセプトが、“Hi SPEED-SECURITY-SPEC”そして“step to the TOP”です。
このビルをベンチャー起業家に使っていただき、ビジネスの頂点、言うなれば『ダイビル』や『UDX』に入居できるような企業を目指していただきたい。その成長のために必要なスペック・安全性・そして時間を確保し、ライバルに差をつけることができる、そんなビルにしたい。そんな思いを企画の細部にまで込めて、プランを練っていきました。
STEP 4
相手に係わらず、細部まで一切の妥協を許さずにこだわり抜く熱意が生んだ設計事務所・ゼネコンとの信頼関係
新築プロジェクトも無事設計が終わり、いよいよ工事がスタート致しました。私たちは毎週建築現場に足を運び、コンセプトに合った自分達の描く理想のビルになるように、細部にまでとことん拘って設計事務所の先生、ゼネコンの現場所長と議論を繰り返しました。
定例会議に出席するのは、私達の他はみなベテランの先生や職人ばかりです。そのような方々を相手に、どんどん細かなオーダーをするものですから、設計事務所の先生もゼネコンの現場所長も最初はうんざりしていた様でした。しかし、私達が本当にいいビルを作りたいと真剣に議論を交わしているうち、次第に、アイデアを提案していただけるようになり、建築現場が急激に活気付いてきました。
これはプロジェクト完了後、設計事務所の先生から聞いた話ですが、『最初は若造が何を言っているんだと思ったよ。でもあの時の「本当にいいものを創りたい」という真剣な議論、そしてその熱意に心を動かされた。自分の若い頃を思い出したよ。』とのことです。その話を聞いた時、本当に胸が熱くなりました。
STEP 5
同じ夢を重ねてくれる仲間がいることのありがたさ
本プロジェクトの完了期限は6月末でした。今回のプロジェクトはあくまで投資用不動産であり、ビルが完成して終わりではありません。建物は人に利用していただいて初めて価値を生み出すものであり、その過程には必ずリーシング(賃貸募集)活動が存在します。本プロジェクトは、6月末のクロージングを想定する上で、4月中には何らかのリーシングの結果が必要であると考え、2月末から活動を開始することに決めました。
ところが、いざリーシング活動を始めてみると、全くと言っていいほどいいお話をいただくことはできませんでした。我々の熱い気持ちとは裏腹に、お客様からは判で押したように冷静な答えしか返ってきませんでした。しかしそれも無理はありません。我々が設定した賃料は、本プロジェクトの周辺の相場に対して1.5倍近くも高かったのです。もちろん、本プロジェクトのコンセプトやビルのクオリティーを勘案した結果、妥当だと思う賃料の設定をしたのですが、この冷ややかな市場の反響がプレッシャーとなり、私は隠せないほどの焦りを感じていました。期限が刻々と迫る中、私は一つの決断をしました。
「プロジェクトの期限を遅らせることはできない。賃料を下げてでもテナント様に入居していただこう。」
決心した私は、苦渋の思いでリーシング担当の先輩に切り出しました。すると、いつもは冷静な先輩がこう言ったのです。
「もう少し時間をくれ!こんなにも我々の思いを注いで、一所懸命に創ったビルだ。この賃料を得るにふさわしい価値は必ずある。絶対に分かってくれるお客様がいるはずだ!」
運命共同体として、同じ夢を重ねてくれる、同じ思いで命を掛けて取り組んでくれる仲間がいること。大袈裟かもしれませんが、私は今まで生きてきた中で、この時ほど嬉しかったことはありませんでした。
STEP 6
社会性に合致している夢ならば、思いは実現する
新緑の季節が訪れる頃、漸く建物から足場が外れ、待ちに待ったビルのファサードが現れました。
シャープに、縦のラインを強調したカーテンウォール。アプローチには奥行きを強調するための細長いタイルを使用し、壁にはモダンアートを飾りました。エレベーターは入口でSuicaをタッチすると自動で下まで降りてきて、お客様をお迎えします。エレベーターに乗り数秒、フロアに着きドアを開けると、自然光溢れる明るく快適なオフィスが広がります。トイレは男女別に分かれており、有名ホテルと同じトイレが備えられています。コンセプトである“Hi SPEED-SECURITY-SPEC”に加え、デザイン・使い勝手・快適さとを追求した次世代型オフィスが誕生しました。
「やっとできた。しかし、果たしてテナント様に気に入っていただけるのだろうか・・・」
そんな我々の心配もどこへやら、3ヶ月前にはお客様に相手にもしていただけなかったビルとは思えない程の大反響をいただき、見る見るうちにオフィスは埋まっていきました。
この夢のような出来事に、我々は肩を抱き合って喜びました。この時の経験は、信念を貫き通すことの大切さを我々に教えてくれました。そして好機は続くもので、この時期にこのビルの新しいオーナー様も現れました。
「こんなにも思いの込められたビルは初めて見たよ、これなら安心して購入できる。本当に良い買い物をさせてもらったよ、ありがとう!」
オーナー様からこの言葉を聞いた時、私は思わず涙が出そうになってしまいました。
STEP 7
子供の頃からの夢へ、新たな一歩を踏み出す
そして現在、私は幸運なことにまたしても当社初となる他社との共同事業でのビッグプロジェクトのリーダーとして、新たな開発に着手しています。流行の最先端である渋谷を見下ろすロケーションにて、敷地面積約300坪弱の土地を購入し、渋谷有数のオフィスビルとして延床面積2000坪を越すビルを建築する、という夢のようなプロジェクトです。
この案件を紹介していただいたのはある年の12月26日、年末でオフィスに自分以外誰もいない金曜日の夜中でした。しかし、当時私が手掛けたと言える新築プロジェクトは秋葉原の初の新築案件のみ、あまりの規模のギャップに「自分の手に負えるのか・・・」と不安が過ぎりました。その時、私は自身が当社に就職を決めたときのことを思い出しました。
私は就職活動時、当社の最終面接である社長面接の時に、当時大学で手掛けていた豊洲のドックヤード再開発事業の課題を持参し、社長にプレゼンテーションしました。その時、私の子供の頃からの夢である街づくり『大規模複合施設の開発事業』をやりたいと、恥ずかしながら社長に延々と語りました。その際、社長は私の稚拙で実現性も根拠も無い話をずっと黙って聞いていただき、一頻りしゃべり終えたところで私にこう言ってくれたのです。
『いい夢だね。その夢を当社で実現させてくれないか』
その時のことは、今でも鮮明に覚えています。
『・・・私は、渋谷を世界に伍するビジネスエリアにしたい!!』
その後、度重なる難局を仲間と共に乗り越え、ついに道玄坂プロジェクトは始動しました。
「いつか、六本木ヒルズのような街づくりをしたい」
そんな子供の頃からの夢に、一歩近づけたような気がしています。
今回のプロジェクトが成功したカギは、「秋葉原を日本有数のビジネスエリアにしたい!そのためにも秋葉原の将来を担うベンチャー企業をサポートしたい」という夢を、メンバー全員と共有し、妥協することなく真剣勝負を貫くことができたからであると考えます。
街の抱える様々な問題点、そこから発せられるニーズを的確に汲み取り、そこに我々自身が「良いものを創りたい」という夢を描き、飽くなき“情熱”をプラスすれば、夢は必ず実現すると信じています。