FRONTIER JOURNEYとは

FRONTIER JOURNEYでは、様々な領域で活躍する「人」に焦点を当て、
仕事への想いや人生哲学を深くお聞きし、私たちが大切にしている「利他の心」や新しい領域にチャレンジし続ける「フロンティア精神」についてお伝えしています。
人々の多彩な物語をお楽しみください。

Vol. 010

冷静な判断力と熱い情熱を備えた
建築のプロが語る保育園への
バリューアッププロジェクト

建設部 副部長
小川 修佑Shusuke Ogawa

2022年9月22日

老朽化した建物などに手を加え、新たな価値を付与して再生させるバリューアップ。各プロジェクトには、建築に精通した建設部のメンバーがアサインされる。Vol.8で紹介した佃煮店から保育園へとバリューアップさせたプロジェクトでは、建築に関する課題を1つ1つ解決し、さらに年若いリーダーである中嶋の支えとなったのが建設部の小川修佑だ。そのクールな見た目通り、冷静沈着なキレ者である小川だが、胸の奥には建築に懸ける強い情熱があった。

建築上のハードルをいくつも乗り越え、
佃煮店から保育園へと生まれ変わった

小川は、ものづくりと生活空間に興味があり、大学で建築を学んだのちに総合不動産会社で10年間キャリアを積み、サンフロンティアへ入社した。現在では建築のプロとして、社内でも幅広いプロジェクトに関わっている。

「私の業務は、プロジェクト全体の設計や工事の管理、デザイン監修などがメインです。オフィス事業で物件購入を検討するときには、プロジェクトメンバーと一緒に建物を訪れ、実際の構造や建築物としての課題を確認します。それ以外にもリーシングマネジメント(賃貸仲介)やプロパティマネジメント(ビル管理代行)などでも、建築面でのサポートを行っていますね」

今回のプロジェクトでも、佃煮店へ訪れる中嶋に最初から同行し、計画の前提となる“保育園に生まれ変わらせることが可能なのか”を建築の側面から検討した。

「築40年の建物だったので、耐震性には不安がありましたね。建築当時の仕様書を見ながら現在の耐震性を計算したり、建物の構造を分析する専門の設計事務所と協力したりしながら、安全な保育園にできるのかを調査しました。結果、『行ける!』と判断し、建築からプロジェクトのGOを出しました」

こうしてプロジェクトがスタートすると、保育園完成後に入居することが決まっていた「さくらさくプラス」と一緒に建物の課題を洗い出し、設計の方向性を定めた。建物自体に関わる部分はサンフロンティアが、内装に関わる分は「さくらさくプラス」が担当。順調に設計も固まり、工事がスタートしたが、“保育園へ生まれ変わらせる”という高いハードルが、複合的な問題を引き寄せる。

「保育園にするためには、耐震性を維持しながら“階段が2つ必要”、“エレベーターを設置”、“窓の増築”など、クリアしなければならない要件が多く、かなり大掛かりな工事が必要です。その影響で想定以上の騒音や粉塵が出て、近隣の飲食店から『工事をやめてください』とクレームが発生してしまいました。詳しくはVol.8参照)。すぐに中嶋と飲食店に駆けつけて謝罪。可能な限りご迷惑をおかけしないよう工事を営業時間外にするなどの調整をして、どうしても音が出てしまう時間帯の対策についてご説明をしました。『まぁそれならいいよ』とおっしゃっていただいた後も、粉塵の掃除をしに何度か通いましたね。そうしているうちに徐々に信頼関係ができ、最後には『はじめからそうしてくれれば問題なかったよね』と言っていただけました。ありがたかったですね。地域に根差したプロジェクトでは、建物が担う役割が重要なのはもちろんですが、出来上がるまでの過程にも配慮しないと、みんなを笑顔にはできないんだという責任を痛感しました。

もう1つ、今回のプロジェクトで大きな課題だったのは納期です。保育園は、4月開園というスケジュールのもと、行政手続きや園児の募集、スタッフの確保などの準備をしているので、遅延は絶対に許されませんし、入園を心待ちにする子どもたちを裏切ることもできません。ですから、『設計が遅れていないか』『工事は順調に進んでいるか』といった点は常にチェックし、スケジュール管理に神経を使いました。なんとか無事に4月の開園に間に合わせることができ、安心しました」

“古い建物を再生させる”
––つくり手としては困難でも、
それが多くの人にとって理想的な建築のあり方

小川は、プロジェクトで苦労した話も自身の成長や学びだとして、常に淡々と話す。しかし、“建物により大きな価値をもたらすバリューアップ”の話題になると、一気に熱を帯びた。

「大学で建築の研究をしているときから、ヨーロッパや京都の古い街並みや古民家に美しさを感じており、すごく好きでした。学生時代には、趣味と勉強を兼ねて歴史ある街を訪れては、時を経た建物を見学し、その力強い姿に感動していましたね。建物から視野を広げて考えても、古い建物を利用して次世代へと受け渡していく取り組みは、街のアイデンティティにもつながると思っています。もちろん、ヨーロッパの歴史的建造物とは異なりますが、自分が古い建物を生かすプロジェクトに関わっていることには、大きなやりがいを感じています」

とはいえ、現実的に“古い建物を生かす”ためには、変えることの難しい基本構造が設計や工事のうえで制限となり、そう簡単にはいかないはずだ。それでも小川は、これが理想的な建築のあり方の1つだと語る。

「確かに“スクラップアンドビルド”、つまりすべて取り壊して一から建て直すほうが簡単な面もあると思います。古い建物を生かすとなると、遵法性の確保や工事計画の設計などは、教科書通りにはいかず、毎回、建物に合わせて設計しなければならないので、常に困難がつきまといます。今回も、築40年の物件だったので建て直すという選択もあったでしょう。でも、初めて佃煮店を訪れたとき、空間を包む佃煮の香ばしい匂いに70年続いた歴史を感じましたし、『このスペースはね、こう使ってるんだよ』と建物への愛着を語る店主さまの笑顔を見ると、『建物の歴史を引き継ぎ、生かすべきだ』と確信しました。個人的に、古い建物を生かしバリューアップする取り組みは、環境への配慮という意味でも、所有者や地域の方々への安心感という意味でも、理想的な手法だと思っています」

転職して気づいた、
ビジネスにおいて大切な“仲間”の存在

現在、自らの関心の強い業務に邁進し、周囲からも信頼の熱い小川だが、以前在籍した不動産会社では、多様な物件を浅く広く扱っており、建築のプロとして特定の分野を極めたいという焦りを感じていたという。そんななか、一つ一つの物件にしっかり向き合うというミッションを実現していくサンフロンティアに興味を持ち、転職を決意した。

「入社当時は、サンフロンティアの想像以上に果敢に挑戦していく風土には驚きましたね。例えば、ある物件の付加価値を考える際、『1階の駐車場を事務所にしてみては?』という、新たな価値を生み出すためなら、建物の根本に手を入れるような意見も通るんです。それまで私は『駐車場は駐車場として、どう価値をつけるか』という視点だったので、すごく刺激的でしたね。当然、同僚たちの技術レベルも高く、自分はまだまだだなと実感することも多かったです」

求められるハイレベルな意識とスキル。小川は中途入社として即戦力になるべく自ら努力を重ね、さらに“仲間”のサポートもあり、急速に成長していった。小川は少し気恥ずかしそうに、いつものクールな表情をくずし、“仲間”という言葉を使った。

「この会社に来て、“仲間”の大切さに改めて気づかされました。入社すぐの頃から、業務のなかで私が手をこまねいていると、担当でもないメンバーが見て見ぬふりをせず、一緒に考えてくれるんです。問題が起きたときにも『おれも行こうか?』と助けてくれる上司など、本当に“仲間”たちに支えてもらいましたね。そんな風土のおかげで、問題が発生したときでも、複数のプロジェクトが重なって忙しいときでも、辛いと思ったことはほとんどありません。さきほど話した佃煮店の耐震性を調査していたときも、建物の構造を見抜くスペシャリストの先輩が『建物の形状や高さを考えると、大丈夫だよ』と背中を押してくれたので、安心感がありました。

入社から数年たった現在思うのは、毎回建物に合わせた高度な設計・工事の手法を考える仕事では、技術的なスキルが属人化しがちな部分があります。だからこそ、常に仲間たちのノウハウを活用できるチームワークが欠かせないんですね」

自身のスキル向上だけでなく、
企業価値の向上を目指す自分に出会った瞬間

最後に、小川の目指すべき目標やゴールを聞いてみた。

「まずは目の前の古い建物をバリューアップさせる事業で、お客さまが期待する以上の価値を生み出し、街や地域に影響をあたえられるような建物を生み出したいと思っています。私にとってはプロジェクト1つ1つがその挑戦です。もう少し大きな視点で見ると、そうした成果を積み重ね、『サンフロンティアさんと仕事をしたい』『サンフロンティアさんのビルなら入りたい』と言っていただけるお客さまを増やし、企業価値の向上にも貢献できたらと考えています」

話しながら、小川は自分でビックリした表情を見せた。真意をたずねると、発言をしながら自らの変化に気づいたのだと笑う。

「自分自身、昔はそんなに野心的なタイプじゃなかったような気がするので、さきほどの自分の発言に驚きました(笑)。以前から技術やスキルを向上させたいという意欲は強かったんですが、正直、企業の価値や成長などはあまり考えていませんでしたね。ただ、周囲の仲間や、会長をはじめとするトップリーダーたちと仕事をするうちに、自然と人間性にも影響をあたえられているのだと思います。今度は私自身が、後輩たちにいい影響をあたえられるようなリーダーになっていきたいですね」

自らのスキルの向上を目指しながら、担当した業務に精一杯取り組む。トラブルが起きれば、先輩や同僚と協力しながら解決を目指す。上長からのアドバイスを素直に受け入れる。どれもビジネスパーソンとしては当たり前かもしれないが、すべてを実現できている人はほとんどいないだろう。もちろん、本人だけではなく、周囲にいる優れた仲間たちの影響もあるが、小川の姿からは、時代によって変わることのない、一流のビジネパーソンのエートスを感じずにはいられないはずだ。

次回の「Frontier Journey」では、保育園の運営を行う「さくらさくプラス」の代表者様へのインタビューをお届けします。

Next Frontier

FRONTIER JOURNEYに参加していただいた
ゲストが掲げる次のビジョン

一つ一つの建物と向き合い
バリューアップさせる事業で地域を活性化させ、
企業価値の向上に貢献する
編集後記

ビジネスシーンで度々問題になるスキルやノウハウの属人化。特に、メンバーが異なる場所で勤務するリモートワークなどの新しい働き方が普及した現在、スキルの属人化は以前よりも起こりやすい状況だ。そのため、常に業務の進捗を共有できるアプリケーションの導入や、勤務中に常時回線を繋ぐ新たな社内制度、リモートでも相談のしやすい風土づくりなどの対策をしているケースも多い。しかし、サンフロンティアでは、古い物件のバリューアップに関わる独自性の高い建築技術における属人化において、困っている“仲間”がいたら周囲のみんなが自然と手を貸すというチームワークによって、問題を解決するばかりか、業務の精度を上げる仕組みを実現している。ここに、“バリューアップ事業”のパワーの源があるのもしれない。

いかがでしたでしょうか。 今回の記事から感じられたこと、FRONTIER JOURNEYへのご感想など、皆さまの声をお聞かせください。 ご意見、ご要望はこちらfrontier-journey@sunfrt.co.jpまで。

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